2009年12月6日日曜日

Apple戦略

 中島聡さんのグログを読んで.
 今のAppleのビジネス戦略は、倒産寸前だった97年当時に作った「30年ロードマップ」に書かれた通りのシナリオを描いているという。
 「映像・画像・音楽・書籍・ゲームなどのあらゆるコンテンツがデジタル化され、同時に通信コストが急激に下がる中、その手のコンテンツを制作・流通・消費するシーンで使われるデバイスやツールは、従来のアナログなものとは全く異なるソフトウェア技術を駆使したデジタルなものになる。アップルはそこに必要なIP・ソフトウェア・デバイス・サービス・ソリューションを提供するデジタル時代の覇者となる」である。
 Final Cutが着実に画像編集ツールとしてのプロフェッショナルの間でのデファクトの地位を取りつつある部分だとか、WebKitがスマート・フォン向けブラウザーのデファクトになるつつあるなど、とても戦略的に思える。
 「これから10〜15年の間にアップルが何をしてくるか」が自然に見えて来る。
 Apple TVは「ひょっとしたら売れるかも知れない」などの軽い気持ちで作ったデバイスではなく、「アップルがリビングルームにネットを通して映像が提供される時代の覇者になるための最初の一歩」であること。日本でも米国でも光ファイバーを通した映像の配信はまだまだビジネスとして立ち上がっていないが、いつかはそんな時代が来ることだけは確実。Apple TVはそんな時代に向けた先行投資であり、いつかはApple TVをリビングルームのiPhoneのような存在にしようと企んでいることは明白である。
 Appleが書籍・雑誌のデジタル配信ビジネスに本気で出て来ることがほぼ確実なこと。「デジタルで配信された書籍・雑誌を読むのに最適なデバイスは何か?」と考え、それに最適なデバイスをハードもソフトもサービスも含めて設計し、コンテンツ流通の仕組みと一緒に提供するのがAppleである。
 ゲーム市場。最近のiPhone/iPod touchのアプリの宣伝の仕方でも分かる通り、Appleはすでに「ゲームを遊ぶ」をその二つのデバイスの主要なユーザー・シナリオの一つと位置づけている。わずか2年あまりの間に、iPhone/iPod touchは既にSony PSP、Nintendo DSに十分対抗しうる携帯ゲーム・プラットフォームに成長したのだ。
 PS3/Wii/Xbox360に対抗する据え置き型のゲーム市場。何年後になるかはわからないが、次の世代のApple TVがOS-Xを搭載し、iTunes storeからゲームをダウンロードして遊べるようになる、という可能性は十分にある。
 ロードマップが、出井さんの時代にソニーが掲げていたビジョンと酷似している点。97年の時点でそこまでのロードマップが書けており、かつそれをこれだけ長い間ブレずに着実に実行して来ているという点が、まさに今のAppleの戦略の強さの源流だと思う。

 久し振りに経営戦略を聞いた.おかしいほどに確かにソニーと似ている.出井さん去りし後のソニーの慮る私である.

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